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洗い晒したジーンズに白いシャツ。
青年は前日帰ってきて着替えること無く眠ってしまったようで、ようやく目覚めたのは日が真上を過ぎた辺りだった。
「ああ…いけね」
柔らかい色のブロンドの髪をガシガシと掻きながらむくりと起き上がりはしたものの、再びクシャクシャになったシーツの上に倒れ込んだ。
郵便受けにはきっと新聞が挟まりっ放しだろう。
あるいは近くの通りに住み着いている孤児が盗んでいってしまっているかもしれない。
何しろボロアパートの四階に住んでいるとはいえ、上はどこぞのマフィアだかチンピラだか得体の知れない奴だ。
訪問客…いやとんだ珍客に部屋を間違えられて青年は幾度となく狙撃されているのだ。
…今でも銃痕がしっかりと壁に刻まれており、見舞金と口止めを兼ねた金が上のお部屋からよくベランダに投げ込まれている。
かと思えば下の階では、借金を背負った屋根職人の一家。
オヤジが呑んだくれでどうしようもない奴で、暴力的な音と怒鳴り声が年中しているので奥さんが不憫である。
…がこれまた度々青年の部屋に借金取りが間違えて訪問してくるので(しかも半分以上が奥さんの名義の借金!ここがポイント)辟易としている。
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