光と共に

2/4
前へ
/404ページ
次へ
「ゆい、結衣、結ー衣!」 放課後、学校の玄関を出た所で呼び止めたのは、友人の伊藤可奈だった。 少し茶色い緩く巻いた髪を揺らしながら、笑顔で近づいてくる可奈は、誰が見ても可愛らしいと思うだろう。 ぱっちりとした大きな眼に、長い睫、高い鼻、そこには笑顔がある。 高校二年生の飯山結衣は真っ黒な髪を三つ編みにし、きっちりと制服を着ていた。 特徴と言える所が無く、あえて特徴を言うなら、本当に真面目などこにでもいる女子高生だと言う所だろう。 「可奈ちゃん、どうしたの?」 「これから映画見に行かない?今日は四人で行ったら、いつもより更に割引だからさ、ね?」 「四人?」 可奈が見つめるその先を辿ると、クラスメイト二人が立っていた。 「飯山、映画好きだって言ってたよね」 おっとりとした口調で優しく笑いかけながら、こちらに来たのは押本信広だった。 この優しい雰囲気が好きだった。いや、今もまだ好きなのだ。 可奈と付き合っているのに―― 「俺は行くなんて言ってないけど」 陽にあたると少し茶色くなる短い髪をぐしゃっと掴みながら、中村達久は言った。
/404ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1737人が本棚に入れています
本棚に追加