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「ごめん、私もちょっと…」
「ええ~!」
可奈は頬をぷくっと膨らませた。
この場にいたくない、ただ辛いだけなのに。
映画なんて見に行ったらもっと辛くなる。
「ごめん」
結衣は呟くように言うと、その場を走り去った。
「えー結衣ー?」
可奈が呼び掛ける声が聞こえる。
それでも走り続けた。
誰かが追いかけてきているような気がしたから。
「飯山!」
ガシッと腕を捕まれた。
振り向くと怒ったような顔をした中村がいた。
「何…?」
「お前、押本のこと好きなの?」
みるみる顔が熱くなる。鏡を見なくても分かる、顔は真っ赤に違いない。
「やっぱり。あのさ、俺……」
突然、目の前がぐらついた。
錯覚ではない、そう気がついたのは校舎の窓が割れたからだ。
木々がゆさゆさと揺れ、立つことすら出来ない。
どこからか、他の生徒が地震だと騒ぐ声が聞こえる。
「大丈夫か、飯山」
「う、うん」
まだ揺れ続ける地震の中、中村は結衣を支えた。
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