『Ａssassin.―暗殺者―』Act.Ⅲ

第三話・―幸せを呼ぶ泪―

　長時間に及ぶ手術を乗り越え、楓は奇跡的に一命を取り留めた。
　だが、術後すぐに目覚めるだろうと予想されていた楓の目は、一晩経ってもひらかれる事は無かった。
　医者の話によれば、何らかの心因性のものが、楓の身体に影響を及ぼし。意識が戻らないのかも知れない、との事だった。
　原因を聞かれた隆だが、正直に答える事は出来無かった。
　隆には理解っている。
　一命を取りとめたとしても、楓が意識を取り戻そうとしない理由を。
　それは恐らく自分のせいなのだろうと、隆は楓の顔を見詰める。
　あの時、自分が自らの母親に殺されようとしている時。
　まさかキラー・ビーが楓を連れて、現場にきているとは思わなかった。