第三話・―幸せを呼ぶ泪―

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 隆は後悔していた。  母親の苦悩を憂うあまり、楓を置いて逝こうとした事を。  自分の軽率な行動のせいで、何よりも大事に思えるようになった楓を、こんな風に傷付けてしまった事を。  隆の脳裏に、楓の眩しい笑顔が浮かぶ。  だが、今は決して……その笑顔が隆に向けられる事は無い。  いつもは楓の方から握り締めてくれる、今は力無いその手を、今度は隆が握り締める。  その場に跪き、まるで許しを請うように、隆は呟く。 「駄目なんだ。楓、君がいないと、いてくれないと……俺はもう、独りでは生きられないんだよ。楓……」  そんな悲痛な声が、病室に響く。  だが、聞こえてくるのは楓の声では無く、無機的な機械音と人工呼吸器の音だけ――。
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