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『私は、生まれた時より名前を持っていない。だから名前を欲する。拝借した名前の有効期限が切れれば、また他の名前を拝借し有効期限の長い名前を求め次の街を目指す。』
金髪の少年は名前を欲する理由を一通り話終えると、ディオの顔の前に手を翳す。
ディオが名前を取られる…と体を竦めた時だった。
『君の名前は変わっている…君の名前を奪いとることは私にはできない…』
悔しそうに顔を歪める金髪の少年にディオは少しだけ罪悪感が芽生えた…。
『君の名はディオだね。私も君の様に素晴らしい名が欲しかったよ…』
悲しそうに、呟く金髪の少年に名は無い…恐らく、名前の有効期限が切れてしまったからここに来たのだろう…
『しょうがない…今日はこの花の名前にしよう。』
少年が指差したのは小さな小さなスミレの花だった。
ディオはそれを黙って見ていた。
『小さな小さな命よ…今宵アナタの名前を拝借致すことをお許しください。』
っと言いスミレの前に手を翳す。しばらくすると金髪の少年はディオの居る方に振り返り、
『私の名前は今日からスミレだ。有効期限が切れるまで仲良くしてくれ。』
っと言い“スミレ”は月明かりのなかやんわりと微笑んだ。
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