music1

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気がつけば、俺の夢は『ミュージシャン』だった。 それまでの俺は、音楽には一切興味が無かった。 ただ、大人になれば普通のサラリーマンにでもなろうかと思っていた。 俺が中学にあがって4ヶ月後の事だった。 ある日、友人の家に遊びに行った時、友人の兄がお勧めしている曲を俺は聴いた。 海外のアーティストではあったが、それは俺を音楽の道へと連れて行ってくれた。 「これ、なんてぇの?」と友人に訊くと「ロック」と答えた。 それからだった。俺はCDショップに行ってロック系のCDを買いあさった。 初めて買ったCDは日本のアーティストで、今は解散しているが“ラインスター”というバンドだった。 そのCDのジャケットを見ると、言葉に詰まる程だった。男なのに化粧をしていて、髪の毛は逆立っていた。 濃いメイクに色とりどりの髪の毛、派手な衣装は想像以上だった。 その曲を聴くと「凄い」の言葉しか出てこなかった。 激しいメロディに、心臓に重く圧し掛かる歌声。楽器に込められた想いが、曲に乗って伝わってくる。 俺はその曲を聴いて凄く感動した。 それから俺は変わった。 ロックに関するCDは買い、更にヴィジュアル系の物も買っていった。俺的に、ヴィジュアル系ロック・バンドの印象は強かった。 強烈に響くギターサウンドとリズム感が良い曲調。そして、聴いている相手に自分達の想いが届く様に歌うヴォーカル。 それら全ては、俺の心を魅了した。 そして、毎月の小遣いはもちろんの事、毎年貰うお年玉全てをちょくちょく貯めていった。 高校にあがった最初の春、俺は貯めたお金で念願のギターを買う事が出来た。 最初は何がなんだか分からなくて、友人の兄が小さなバンドを組んでいるというので、いろいろと訊いてみたりした。 初めてギターを手にし、軽く音を出してみる。けど、思っていた音とは違い、間の抜けた“ペンペン”という音しか出なかった。 もっと“ギャイ~ン”という音が出ると思っていたからだ。 それからも金は貯め続け、音を出す為に必要なものを買っていった。 俺は殆どの金はギターに費やし、欲しい物などは全て我慢した。 あの日から俺の夢は決まっていたのかもしれない。 俺は、ミュージシャンになる!
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