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馬車が揺れている。
今日ベルサイユは舞踏会。
母親に連れられて、少女は宮殿に向かっていた。
まだ幼い感じが抜けきらない横顔は、緊張と期待でこわばっている。
年の頃は15
少々遅い社交界デビューだった。
「緊張しなくていいのよ、マリア。みんな貴女の美しさに目を見張るわ」
母親が励ますと、彼女ははにかんだ笑顔をみせた。
年頃の娘らしく、ハンサムな紳士との恋物語を淡く夢みていた。
「ベルサイユ宮殿だわ」
馬車から見えてきた宮殿は、お屋敷から見ていた景色とまるで違っていて、とてもきらびやかで壮大だった。
「いよいよなのね」
マリアは馬車の窓から、ベルサイユに小さく手をふった。
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