社交界

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澄みわたったエメラルドグリーンの瞳と、目があってしまう。 マリアの心臓は破裂しそうなくらい高鳴った。 神秘的な瞳に、目をそらせない。 彼はそんなマリアを珍しそうに見つめていたが、しばらくしてそっと笑顔を向けてくれた。 思いがけなかった笑顔に、マリアは頬を真っ赤にしてうつむいた。 ―なんて綺麗な笑顔なのだろう。 うつむいたまま目をとじても、まだ瞼のうらに焼きついている。 あんなにじっと見つめてしまって、変な娘だと思われただろうか。 きっと赤い顔をしていたに違いない… そんな考えが、ぐるぐるとマリアの頭の中をまわった。 ワルツの音楽に、ハッとして顔をあげると、彼の姿は消えていた。どうやら見失ってしまったようだ。 慌てて辺りを目で捜したが、人混みでよくわからなかった。 がっかりしているマリアに、後ろからダンスを誘う声がかかった。 「マドモアゼル。お相手ねがえますか?」 マリアが振り返ると、そこにはあの黒髪の青年が立っていた。 「あ!」 さっと扇で驚いた顔を隠す。心臓が脈打って、返す言葉を思いつかず、マリアはしばらく立ち尽くした。 「やはり…ご迷惑でしたでしょうか」 青年は美しい顔を不安げに曇らせる。捨てられた猫のような瞳をして。 「…そんな!ちっとも迷惑なんかじゃありませんわ」 とっさに否定して、マリアは彼の近くに進んだ。 差し出された手に、そっと自分の手を重ねる。 「少し、驚いただけ…」 恥ずかしさをこらえながら、マリアは彼に微笑んだ。ほっとしたように、彼は重ねられた手を優しく握り、マリアと向き合った。 「よかった。ありがとう」 思ったよりも温かい手に、マリアはどこか安心した。 彼はマリアをフロアまでエスコートして、二人はゆっくりワルツを踊り始めた。image=137667206.jpg
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