17人が本棚に入れています
本棚に追加
澄みわたったエメラルドグリーンの瞳と、目があってしまう。
マリアの心臓は破裂しそうなくらい高鳴った。
神秘的な瞳に、目をそらせない。
彼はそんなマリアを珍しそうに見つめていたが、しばらくしてそっと笑顔を向けてくれた。
思いがけなかった笑顔に、マリアは頬を真っ赤にしてうつむいた。
―なんて綺麗な笑顔なのだろう。
うつむいたまま目をとじても、まだ瞼のうらに焼きついている。
あんなにじっと見つめてしまって、変な娘だと思われただろうか。
きっと赤い顔をしていたに違いない…
そんな考えが、ぐるぐるとマリアの頭の中をまわった。
ワルツの音楽に、ハッとして顔をあげると、彼の姿は消えていた。どうやら見失ってしまったようだ。
慌てて辺りを目で捜したが、人混みでよくわからなかった。
がっかりしているマリアに、後ろからダンスを誘う声がかかった。
「マドモアゼル。お相手ねがえますか?」
マリアが振り返ると、そこにはあの黒髪の青年が立っていた。
「あ!」
さっと扇で驚いた顔を隠す。心臓が脈打って、返す言葉を思いつかず、マリアはしばらく立ち尽くした。
「やはり…ご迷惑でしたでしょうか」
青年は美しい顔を不安げに曇らせる。捨てられた猫のような瞳をして。
「…そんな!ちっとも迷惑なんかじゃありませんわ」
とっさに否定して、マリアは彼の近くに進んだ。
差し出された手に、そっと自分の手を重ねる。
「少し、驚いただけ…」
恥ずかしさをこらえながら、マリアは彼に微笑んだ。ほっとしたように、彼は重ねられた手を優しく握り、マリアと向き合った。
「よかった。ありがとう」
思ったよりも温かい手に、マリアはどこか安心した。
彼はマリアをフロアまでエスコートして、二人はゆっくりワルツを踊り始めた。
最初のコメントを投稿しよう!