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少女
麗らかな小春日和が続く二月。
暖かい春めいた陽気に、梅の花が穏やかに綻ぶような季節であった。
両国橋の西側。
両国広小路は火避け地として作られた場所であるが、いわずと知れた盛り場である。
「きゃぁああ」
喧騒の中で少女の悲鳴が上がった。
上等な生地にたっぷりと膨らんだ綿入れの着物に、上物の帯に、華やかな装飾の数々。
一目で裕福な町人のお嬢様とわかる少女だ。
「真っ昼間から遊び歩くなんて、いいご身分だなぁ」
まだ昼下がりというのに酒の匂いをさせた男が二人、少女に絡んでいた。
「吉蔵、助けてなさいよっ」
「お嬢さんをお離し下さい」
お供の手代の男が逃げ腰になりながらも、財布を突き出しながら間に入るが、難なく突き飛ばされた。
「吉蔵さん大丈夫?」
ズザッと砂煙を上げ倒れこんだ傍に、小柄な影が落ちた。
「あなたは・・・・」
「真っ昼間からなにをしてんのさ」
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