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緑の黒髪を頭のてっぺんで結わえただけの髪を揺らす、若草色の綿入小袖の少女がそこにいた。
「助けて!」
「・・・美濃屋のお千代・・・・あんたねぇ」
少女・不二緒は頭痛そうに吹き出物一つない綺麗な額を掻いた。
ぱっちりした目に、桜色の唇。
年頃の平均的な背丈で、外見だけをとればなかなか品のいい美少女だ。
「貸しだよ」
ぱっと爆ぜる炎の煌きのように瞳が輝く。
「あんたたちいい大人なんだから止めなさいよ」
射抜くように真っ直ぐ見つめる不二緒に、酔っ払いの破落戸は一瞬硬直し、ついで爆笑した。
「代わりにお嬢ちゃんが相手してく・・・・」
「絶対にイヤっ!」
ガッとかわいらしい花柄の鼻緒の下駄で思いっきり向う脛を蹴り飛ばす。
わーっと野次馬の歓声が上がり不二緒を囃し、どこからか木の棒が投げられた。
二尺ほどの棒をパシッと受け取り不二緒はニヤリと笑った。
「私を知らないのはモグリだってこと教えてあげる」
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