森の夢

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現在からさかのぼって1993(平成5)年4月某日埼玉県旧大宮市郊外ー「もう7時よ!起きなさい!!」 私は寝起きが幼稚園に通う前から悪く、母はいつも手を焼いていた。     今20代になってからやっとひとりで起きられるようになったが、朝ごはんを食べながら一分程寝てしまうことがある。 「な~に~?やかましいなぁ」 「そんなこというならもうアンタだけ起こさないよ!ユカリはもう着替えたしご飯食べてるよ。」 ユカリというのはこの頃幼稚園を卒園したばかりの私の2歳年下の妹。素直で聞き分けがよく、ちょっと食いしん坊で肥満気味なところをのぞけば顔も鼻筋が通っていて私よりかわいらしく、性格もよかったから友達や大人に好かれていた。ただ、「五黄の寅」であるせいか、私と同じくらい気性が激しく、私よりはうんと泣き虫なのでよくケンカになる。(私はどうしてお姉ちゃんなんかになってしまったんだろう…そうすれば妹より速くできなくても責められないのに) ぼーっとしてたらまた母は大きい声を上げた。「お姉ちゃん!早くしなさい!」母は私を名前で呼ばない。「おねね」か「お姉ちゃん」だ。私が成人しようがなんだろうがそれだけは変わらない。母に言われた通りに速くしたら靴下は表裏反対、髪は寝癖だらけ、パーカーは前後ろ反対のどれかを必ずやってしまうのでゆっくりやらないと学校で身だしなみを注意されてしまう。 反抗的にも見えるが、それが当時以上に外聞を悪くしないための私の術だった。  いつも母は怒ってバカみたいに私をせかす。だから私は朝が大嫌いだった。いつも「どうしてもっと速くできないの!?」と言われるたびに悲しかった。  どうにか登校班に間に合わせ、学校に行った。私はこの日から小学③年生に、妹がやっと小学生になる。寝覚めは悪かったものの、私は低学年から中学年に上がって、初めてクラス替えがあることにウキウキして、靴に羽でも生えたかのように足取りが軽かった。 この日の夢と学校でのことを私は今も忘れることがなく、きっとこの先も忘れることはないだろう。   けれど、夢で蛍火のランタンを私にくれたの少年が私の敵か味方かは生涯わからない。そして、生涯わからなくても構わない。 彼は私に光をくれた。気まぐれで小さくても、闇で光る希望の光をー
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