序幕―グリム―

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壁一面真っ白な世界。ドアも天井も、壁際にあるベットまでもが全て真っ白である。 その痛い程白い部屋の中、中央に肌色が三つ。三人は向かい合うように、正三角に座っている。 三人の一人、部屋唯一の出入口である真っ白なドアから、最も離れた椅子に座る男が口を開いた。 「いよいよだな」 静かに響いたその声に反応するように、他の二人がゆっくりと頷く。 「俺達は……童話の創造主」 声を出すのは一人だけ。他の二人は頷くだけ。 「俺達は……童話を語る者」 声の男は左右に目を移し、二人の顔をしっかりと見る。その男は深く息を吸い込んだ。その動作を合図とするように、三人同時に口を開く。 「俺達は……この国を愛する者」 声が止んだ部屋の中、三つの影は消えていた……
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