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うかつだった
あの26段目、右足の出し具合があまかったんだ。前に転べば良かったんだ。それは頭からだった。
気づくと三途の川だった。テレビでは定番話で、もはやボクの中でネタとなりつつあった。ほんとにあるんだ、と一瞬おもしろくなった。
いや、冗談じゃない。こんなしょうもないことで死ねるか!
川の流れは穏やかのように見えた。その気になれば岸に戻れる。しかし、不思議と戻れない。少し下流へ、または上流へと工夫はしてみるものの、流れはまるで生き物のようにボクの体を対岸へと押し戻していく。
泳ぎには自信があった。どれぐらい泳いだだろう、いや、どれぐらい抵抗しただろう。
「なかなか、死人だというのに元気なもんだ。これでは今日の予定がくるってしまう。」
頭の上の方から聞こえたようだった。まるでテレビでプロ野球をみているかのような言い方だ。ほおずえついてツマミを食べているお父さんの姿が思い浮かんだ。
不意に体がういた。
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