夜はふけて

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1日目が終わってしまった… ボクはゆっくりと起き上がり、壁にもたれて座った。 こんなところにいる場合じゃないのに… 泣き出したくなった。いまになって現世の人達が思い浮かんできた。 いつも帰ると美味しい晩ご飯を用意してくれる、おかあさん。今日あったことを嬉しそうに聞いてくれて、時には笑って、時には叱って。 温かいおかあさんの手作り料理が、ボクの中で当たり前になっていた。 ここにはあるのは、看守が持ってきた冷たいパンが2切れと、冷めたスープ… 普段は忙しいけど、休みの日はキャッチボールをしてくれるおとうさん。 こりゃぁイチローも顔負けだぞ、とボクのボールを取ってくれる。 例えめちゃくちゃに飛んだボールでさえ、体を大きく伸ばしてしっかりボクのボールを受け止めてくれる。 帰り道では手をつないでくれて、それは大きく、温かかった… ここにはあるのは、あらゆる怨念が染み着いた、固く冷たいレンガの壁の感触だけ… 小学校や中学校で新しくできた友達、小さい頃からの親友、ボクの好きなかわいいあの子…… ボクは今1人だ さみしいよ……
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