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私は溜め息を吐いて、その男の人に尋ねた。
「…で、あなたの名前は?」
「警察に言わないでください。」
綺麗な瞳でじっと見られた。
お願いだからそんな目で見ないで…。
「ただ、お名前を聞いただけです。昨日助けていただいたので、警察に言うつもりはありません。」
私はきっぱりと言った。
「そうですか!」
その男の人は満面の笑みで言った。
可愛い…。
思わずそう言ってしまいそうになった。
「でも、名前をお教えする事は出来ません。」
男の人は真剣な顔で言った。
「何故ですか?」
「知らない人には名前を教えてはいけないんですよ?オレオレ詐欺に引っ掛かります。」
「私のこと知らないんですか?その前にオレオレ詐欺は名前を知らなくても出来ます!」
「あ…そうか!」
駄目だこの人…。
馬鹿っていうか阿呆っていうか…天然?
「でも…やっぱりお教えすることは出来ません。だけど、一つ為になることをお教えしましょう。」
「な…何ですか?」
「早く学校に行かないと遅刻しますよ。」
男の人はにこっりと笑って言った。
時計を見ると…やばい…。
私は男の人を放ったまま、全力疾走で学校まで行った。
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