彼女と早苗

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「そうそう…。でね、事件の内容知らない人は、今の普通の日本人ならいないと言っていい程だと思うんだが……。早苗ちゃんに取材して欲しいのは、彼女の女としての狂気の部分なんだよ。」 「狂気ですか…?」 「そう!彼女はそこそこのピアニストだった…殺した相手はただのサラリーマン。何故そんな男にのめりこんで、あげく殺すまでに至ったのか…。これは本人があの調子じゃ明らかになりそうにないしね…。同じ女として…その辺りを取材してもらえないかなぁ。」 「はぁ…でも…アタシに出来るでしょうか…不倫の末に相手を殺してしまう人の気持ちなんて……。」 考え込んでいると、 「さっきの勢いはどうしたぁ? 実は早苗ちゃんにだけ依頼してる訳じゃないんだ…取材の内容を見て、採用原稿を決める。採用されれば、次の発行の時にも頼む事になるだろう。だから気楽に思う様に書いてくれればいいから。」 「はぁ…。」 「とりあえず、来週の月曜日までに原稿頼んだよ。」 肩をポンと叩くと、編集長はさっさと席に戻ってしまった。
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