空色紙ヒコーキ

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.  澄み切った空には雲ひとつない。  さわやかな春のそよ風と若草色の木の葉は、あちらこちらに穏やかな木影を作り出してくれている。  咲はぱたぱたと慌ただしい足音をたてながら、いまさっきまで庭にいたはずの漣を探して、きょろきょろとせわしなく草原を見回していた。  長い冬が明けた、うららかな春の午後。  時折足元でゆれるナズナに足をとられるけれども、春の日差しをいっぱいに浴びた草花の中を歩くのは、どんなに年をかさねても胸がわくわくしてくる。 .
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