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間近でじっと覗き込んでいるにも関わらず、漣の目をおおっているちょっと長めの睫毛ですら、ピクリとも動く気配がない。
だんだん手持ちぶさたになってきた咲は、長い髪の毛を押さえながら、ぐるりとあたりを見渡してみた。
満開のたんぽぽたち。
微笑みかけてくるパンジーの花。
花壇を埋めつくす色とりどりのチューリップ。
遠くには、咲の腰あたりまで伸びている菜の花畑も見える。
それぞれ背格好やかたちは違うけれど、どれもがようやくやってきた春を喜んでいるのには変わりがなかった。
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