1716人が本棚に入れています
本棚に追加
.
そのとき、ひときわ強い風が、ざぁっと吹き乱れた。
一瞬にして、あたりが淡いピンク色に染まる。
咲は思わず顔をおおい、かたく目をつぶった。
ざわざわと騒ぐ木々の声だけが、頭の上で響いていた。
やがてゆっくりと目をひらくと、桜の花びらが、わずかだが未だにはらはらと散っていた。
ほっと一息をついて、乱れた髪を整えようと手をのべた時、咲は突然異変に気がついた。
なんと、さっきの強風が、咲の大きな帽子を、あっという間にさらっていってしまったのだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!