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――どうしよう……。
咲は途方にくれた。
なんとか届きはしないかと、つま先立ちをして手をうんと伸ばしてみたり、ぴょんと飛び跳ねたりしてみるものの、わずかな風はそんな咲をじらすかのように、枝ごと帽子を揺らしてみせたりした。
またさっきのような風が吹いたら、さらに遠くに行ってしまう可能性だってある。
せっかく今年のはじめに買ってもらった、お気に入りの帽子だったのにと、しょんぼりうつむいたその時。
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