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誘拐犯
自由はなかった。
口を塞ぐガムテープ、体を締め付けるロープが、窮屈だった。
視力は確保されていて、私を誘拐したのは長身の若い男だとわかった。
「33時間以内に3億円」
それが誘拐犯の要求のようだった。
じたばたと抵抗してみると、誘拐犯が来て静かに言った。
「騒いでも無駄だ。」
周りを見渡すと、ここはコンクリートの隔離された部屋だと思えた。
誘拐犯はテーブルにあるコーヒーを一口飲んだ。
幼い私には牛乳をすすめてくれたが、「そうか口が塞がれて…」と気付き、自分で飲んでいた。
私はチャンスとばかりに渾身の変顔をした。
口のガムテープが剥がれるほどの変顔だった。
クラスの男子が給食の時間、よく笑わされて鼻から牛乳を出して、痛がっていたのを思い出したからだ。
見事、誘拐犯は爆笑へと誘われ、予想は見事的中した。
その痛がる顔といったら、
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