侵入者

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侵入者

テーブルクロスを敷いたテーブルの上に、本と、紅茶を一口飲み置く。   外、静かな月と流れる雲で明暗の差が激しい夜だった。   不眠症の私は毎晩こうして本を読む。強力な睡眠薬入りの紅茶をお供にして。   その夜もそうしていたが、いつもと違うことが起きた。   不審な音がしたかと思うと、突然見知らぬ人が部屋に入ってきた。   私は驚きで声が出なかった。   侵入者は、ナイフをかざしてこう言った。   「おとなしくしていれば何もしない。あるだけ金を出せ。」   強盗のようだった。   しかしただの強盗ではなく、これが初めてに思えた。   やけに息切れが激しく、声もかすれていた。   よほど緊張しているのだと感じ、抵抗しようと考えたが、私は恐怖感に背中を押され今あるお金を全て強盗の目の前に出した。   強盗は落ち着きがなかった。   するとテーブルに目をやった。   近づき、紅茶に手を伸ばした。   初めての犯行というのは当たっているようで、喉が渇いていたのだろう。   紅茶の味を楽しむことなく、一気に飲み干した。   私は時間をかけてお金を準備した。   数分後、紅茶に入れた強力な睡眠薬により強盗は深い眠りについた。  安心した途端、私も眠くなってきた。   目が覚めた時、果たして強盗はまだ眠っているのか。   不安なまま、眠り
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