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シーク
から覚めると、そこは何もない場所だった。
白い洋服は毎回汚されるからと、一着しか買ってもらえない。学校からの帰り道、そんな白いスカートを土で汚されたイジメられっ子の私は、人間なんて誰もいない理想の世界を想像しながら歩いていた。
すると背後から襲われ気を失った。
そして今、見知らぬここにいる。
周囲は全てが白だった。
ビルも車も植物も、全てが白だった。
人は私以外誰もいない。
まさに白が白のままで、人間なんていない理想の世界だった。
ふと、絵の具と筆を見つけた。
私をそれらを手に取り、街の風景を描き始めた。
ビルには窓を、車には模様を、植物には実を。
理想の世界をさらに理想に近づける。
ビルは華やかに、車はファンタジーに、植物は夢あふれるものとなった。
嬉しくなり、指で四角形をつくり、カメラに見立てて単独撮影会を始めた。
これで理想の世界をつくれたはずなのだが、何かが足りなかった。
追究するとそれは、私以外の人間だと気付いた。
指でつくったカメラ越しに見る世界に人の姿はなく、
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