クロス

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クロス

見上げ天を仰ぐ。   そうして、両手を広げる   それは十字架をマネているのか、空に思いを馳せているのか、後ろに立って見ている私にはわからなかった。   それでも、隣にある土を盛っただけのお墓、しかもぬいぐるみのお墓である、そのことを想っていることは、素直に感じとれた。   少年は、片目がとれてしまったウサギのぬいぐるみを、死んだものだと思ったのだ。   何かの見様見真似で、片目の取れたウサギのぬいぐるみを地面に埋め、十字架の代わりに自分が、足を揃え両手を広げているのだろう。   そう思うことにした。   それでも広げた左手のナイフと、右手の片目を見ると、ぬいぐるみの次は私か、と
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