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「じゃ、いってきます」
朝、身支度をして部屋から出かける。部屋に同居人はいないが、一声かけてから部屋を出るのは僕の癖だった。
部屋を出て、寮の廊下を歩き、寮母さんに挨拶して外へ出る。いつもならこのまま学校の校舎まで歩いていって、教室で授業が始まるのをクラスメイトと話しながら待つのだが、今日は違う。
「久々に実家に帰るなあ。まあ、急ぎの用で授業を休んでっていうのが気に食わないけれど」
僕の通ってる学校は全寮制だから、土日も普段は帰らない。それでわざわざ平日に実家に呼び出されるってことはよっぽどの用なのだろう。昨日突然帰って来いと父から連絡があっただけで、何の用かは分からない。
「父さん、せめて用件くらいは言って欲しかったなあ。先生に事情を話すとき苦労したじゃないか」
と、ここで愚痴っても仕方ないのは分かっている。まあ、実家についたら二言三言くらい言ってやろう。
「あ、七葉君。おはよう」
歩いていると一人の少女がいた。幼馴染の風華織姫という娘だ。少し短めの髪が風になびいて何か可愛い。
僕の身長が高ければ彼女の頭に手を乗せて撫で撫でしたかもしれないけれど、生憎僕は小さい。彼女との身長差もほとんど無い。いや、もしかすると身長は追い抜かれたかもしれない…いや、それは流石にないな。
「…えっとごめん、私何かした?何でスルーされてるの私?」
悲しそうな目をして小動物的な可愛さを放ってくる織姫。
「あ、ごめんごめん、考え事してて」
織姫が可愛いなんていうことを考えていたことは決して言わない。幼馴染だし、言っても冗談か何かと言われると思うし。
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