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「んー?ななくんが考え事ねえ。えっちなこと?」
「風華さん、いい加減『ななくん』って呼ばないで?神無月七葉(かんなづきしちは)って名前なんだからせめて普通に名前で呼んでくれないかな?あと、決してえろい考え事じゃないです」
織姫は昔から僕のことを『ななくん』と呼んでくる。おかげで僕の名前が『神無月奈々』という風に間違えられたりする。ただでさえ僕の名前は女の子みたいで気にしてるのに。奈々じゃもう男じゃないじゃないか。
「じゃあ、私のことも苗字じゃなくて名前で呼んで欲しいなあ。もう何年幼馴染やってると思ってるの?」
「えっと、今僕らが十五歳だから…十五年かな」
「もう、それだけ長く幼馴染やってるんだから、もう少し親しい呼び方してくれてもいいじゃない?」
「んーじゃあ、姫?」
「なんか私がななくん苛めてるみたいで嫌。普通に『織姫』とか呼び捨てでいいのに」
「いや、呼び捨てはなんとなく性分に合わないしなあ」
「えー、じゃあいいや、また今度考えよう」
その「また今度」も、いつも「また今度」になるんだけどね。
ふと時計を見る。と、既に少々まずい時間だ。
「えっと、今日から僕実家に帰るから、もう行くね」
「え、ちょっとななくん!?話が急すぎるよ!」
「僕だって昨日夕方聞かされて急だったんだよ!えっといつ帰るかわかんないけど、じゃあね」
「あ、うん、じゃあね」
と、その場を走る。実家には、列車を使って山の麓町まで来た後、バスを乗り継いで行く。だから列車に乗り遅れると大惨事になるのだ。
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