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ついに、『人が人を食う』日が来た。
ある家に、吹雪の中を一人の女が尋ねてきた。
「御免くだされ。此方では爺様が亡くなれたよし、片腕なりと、
片足なり分けて下され。おらの家の婆様もニ・三日には片が付きそうな様子、
その節はすぐにお返ししますんで・・。」
そう言って死人の肉の貸し借りさえあったそうだ。
八戸という所ではこんな事があった。
ある村の、かなり豊かな家があったが、
飢饉のせいで、家族六人のうち四人が餓えで死んでしまった。
父親と十歳の子だけが残った。
父親は、こうしてはおれんと思い、家中のものをありったけ背負い、
子を家に残し、町へと出かけた。
身も悶える寒い日だった。
口に入れるものは何も無い。
子は餓えに耐えかね、床に落ちてた煤けた縄を噛んでいる内に、
我が指をしゃぶり、食いちぎってしまった。
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