人が人を食う

6/9
前へ
/14ページ
次へ
そして火をかけようとしたが、二人の死体を見ているうちに、 空腹に耐えかね、囲炉裏の火に、死体の片腕を炙ってみた。 二人とも食っていってしまった。 餓えを満たすと、もう親も無い、兄弟も居ない。 後からやってきた夫と自分の子を鎌で討ち殺し、これも食った。 女はもう人間では無くなった。 腕や脚は太くなり、目の色も異様に光り、髪を振り乱して野を駈けずり周り、 死人を求めて彷徨った。 飢饉の中なので死人の数は計り知れなかったから、 群がる犬を蹴散らし、人間の死体に齧り付く。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1111人が本棚に入れています
本棚に追加