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遂には生きている人間の子供にも手を出すようになった。
こうなると放っておけなくなり、村の者は集まって、鎌や鍬を振り上げ女を追い払った。
が、振り上げる腕はおぼつかなく、かえって獲って食われそうだった。
ようやく山中に追い払ったが、今度は薪を取りに入る者を襲った。
村中困り果てたが、遂にある猟師の鉄砲の弾に撃たれて、死んだ。
生きながら鬼になった女の話だ。
平賀町という所にも悲惨な話が残っている。
松野部落の、ある下の川の崖下が、赤ん坊の捨て場になった。
その崖は崩れやすく、這い登れないからであろうか、いつと無くそこに捨てるようになった。
まだ生きている内に捨てるのだから、泣き、叫び、崖をよじ登ろうとしては、
土もろとも崩れ落ちる。それでも赤ん坊は、母親の乳を求めては這い登ろうとする。
幼い指からは血が滲み、やがて力尽きて泣き声も次第に細くなる・・。
朝になれば烏が黒雲の様に襲い、目を啄ばみ、腹を裂いて更に啄ばんだ・・。
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