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投げ捨てようとして、老婆は手を止めた。
ノロノロとそれを我が口に持っていき、気が付いたときには骨までソレをしゃぶっていた。
それ以来、老婆は捨てられた赤ん坊を食って、命を繋ぐようになった。
獲物を奪われた烏は不気味に輪を描いて飛び、やがて老婆に襲い掛かった。
「しっ、しっ!あっちさ行げ!!」
老婆は朽ちた木の枝の様な手を振ったが、烏の群れは一向に襲うのをやめない。
老婆は立ち上がって、振り払おうとした。
しかし、老婆は赤ん坊の骨に足を滑らせ、転倒した。
その瞬間、烏達はそれを合図とするかの如く、老婆をつつき始めた。
目を抉り、着物を引き裂いた。
老婆は崖の土を掴み這い登ろうとしたが、土はいたづらに崩れるばかり。
烏は容赦なく、その髪を、足を、そして手を引き裂いた。
やがて、烏達が飛び立った後に横たわっていたのは、
白骨と化した老婆の死体だった・・・。
そのときより、この川を『崩川』と呼ぶようになった・・・。
飢饉が納まってからも、そこからは、
夜な夜な、赤ん坊のすすり泣く声や老婆の悲痛な叫びが、
夜風に混じり聞こえてきたという・・・。
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