メランコラビ

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       家庭的な理由とはいえ、この情景が好きとはいえ。  俺にも教室にいることが寂しいと思うことがある。  なら、いるなよ。という簡単な話なのだが、習慣というか、癖というべきか、教室に残ってしまうのは俺のどうしようもない部分だ。  だからこそ、みゆの存在は俺には嬉しかった。  かわいい女の子と二人っきりで話せるという状況ってのもいいしね。  結局、初めて(?)みゆと会った日はみゆと他愛もない話をした。学校のこととか。  次の日。  俺の頭の中ではみゆと話すのは初めて、みゆが俺のことを何かで知っていたと決め込んでいた。  放課後。 「本当に毎日いるのね」  呆れたような表情で今日もみゆが教室に踏み込んできた。 「ああ。そう言うお前だって何で残ってるんだよ?」 「……秘密よ」 何か言いかけたがみゆは口を結んだ。 「そういえばみゆ、お前何で俺の名前知ってたんだ?」  結論はもう出していたが、一応聞いてみることにする。 「牧本君の名前? だって牧本君有名人だからよ」 「有名人?」  この? 俺が? 「おいおい、冗談はよせ。俺は目立つこともないただの学生だ。どこの世界で俺が有名なんだ。それとも俺ってカッコいい?」 「それはないわね」  即否定。 「少なくとも私たちのコミニティでは、ね」  コミニティ、ね。  頭の中で思考をめぐらすているとみゆはカツカツと音を鳴らしながら教室を眺めながら縦断するように歩き始めた。 「牧本君。あなたはどうして学校へ来るの?」 「はい?」 「だから、学校に来る理由。なんなの?」 「そんなこと言われても学校は来るもんだろ」 「……そう。惰性みたいなものなのかしら。私には理解できないけど」 「理解できないって」 「だってそうじゃない? こんな監獄みたいに閉じ込められて、勉強させられて、強制させられて。 わざわざそのために揃いも揃って学校に来るのよ? おかしいじゃない。理由もなく、そんな生活を続けるなんて」  言っていることの意味がよく分からなかった。  みゆは何を言っている? 「私はしたいことがたくさんあるのよ。でも……できない」
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