メランコラビ

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       コケコッコー。  足元で鶏がコケコケ歩いている。 「牧本、っつーか掃除しろ。鶏に黙ってつつかれてんじゃねーよ」 「……ああ」  俺の掃除場所は学校が『生を知ろう』という目的で飼っている動物達の飼育小屋だ。  鶏、アヒル、ウサギ、そして黒いヤギ(どう見ても馬)。  俺は鶏地区担当。  網越しにウサギ地区の佐藤がこっちを伺ってくる。 「なんだあ? 牧本ー、振られたような顔してんなあ。大丈夫、女は星の数程いるんだっつーの」 「しかし、光り輝く星は少なく、僕たちの手でつかみ取ることは決してできませんでした」 「はぐっ!」  お決まりの台詞で佐藤は精神的に沈んだ。  遠くを見ると、ヤギ担当の水越がヤギ(馬)に轢かれてる最中だった。フライング水越。  それでも俺は頭の中でみゆの言ったことを頭の中で反芻していた。 『牧本君には分かって欲しかったのに』  何を。  一体何を。 「佐藤。お前なんで学校に来るの?」 「そりゃ女の子と仲良くするためあわよくば恋愛するためだっつーの」  青春真っ盛り素敵な答えだった。  しかも迷わず言う辺りが潔いというかなんというか。 「童顔巨乳かつ、目が大きくて俺のことが大好きで、やさしくて気が利いてて俺の欲望に応じてくれる娘いねーのかな」 「欲張るな」 ……… …… …  珍しい。  何が珍しいか。  放課後の俺は教室に残らず、校内をはいかいしてるという点において、だ。  無人の放課後。廊下は孤独を提供してくれる。  一人での学校にももう慣れたもんだな、俺も。  向かう場所は決まっていた。  みゆ。  会わなくては。何のために。  知るかよ。知らないから、会いに行く。  いる場所はなんとなく分かった。  カンだがな。  到着する。  普段は行くことを禁じられている屋上。  そこへ通じる扉の鍵が壊されている。しかも最近壊したような痕。  さて、蛇が出るか竜が出るか。  もちろん本当にそんなものは出たら怖いがな。  俺は扉を開けた。
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