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風が俺にぶつかり、短い髪が流される。
夕日に染色された屋上が俺を迎えてくれた。
その中心には夕日を見上げて物憂げに立ち尽くす少女がいた。
「みゆ」
ふぁさ、と髪を揺らめかせてみゆが振り向いた。
俺を見た瞬間に首を少し傾けた。
「あら、牧本君は教室からお引越し?」
「散歩だ」
「すごい奇遇ね。私も似たようなものよ」
くすり、とみゆの口端が上がった。
「さっそくだが、聞きたいことがある」
「なにかしら?」
ある意味、俺は聞きたくなかったが。
それでも俺の心の中で何かが、何かがひっかかっている。
違和感が、ある。
「俺の友人から聞いた。俺の学園にみゆって女の子はいない」
「そうなの? じゃああなたとは学年が違うのね。私のほうが先輩かしら?」
「さらに聞くとこの学校にもいないんだとさ」
「――そんな筈ないわ。三年のDクラスに髪を左右に結ったみゆってコが……ふふっ」
気付いたのか、本当に可笑しそうにみゆは笑い始めた。
「牧本君? 今の嘘なのね。ふふっ、私、自分でなに言ってるんだろ……うふふ」
「……」
俺はそんなみゆを見つめる。
笑うとさらに可愛いなこいつ。
……率直な感想は今は必要ないだろ。
俺は口を開いた。
「お前……なんなの?」
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