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調べたのは本当だ。女好き佐藤はこの学校の女の子の名前とスリーサイズ、さらには住所(犯罪的)まで即座に言える。円周率よりすごい。
その佐藤がみゆというかわいい生徒(三年のはアウトオブ眼中だそうだ)いない、と明言したのだ。
この学校にこの女生徒はいない。
「そんなことはどうでもいいじゃない。あなたがいて、私がいる。何か不満があるの?」
「実を言うと幽霊とかリアルに怖い」
肝試しやお化け屋敷、幽霊スポットなんてのは平気だが、現実にこうも堂々と不可思議的なものが目の前にいるとなると……。
「大丈夫よ。少なくとも私は霊みたいなものじゃないわ」
俺に歩み寄ってくるみゆ。そしてぎゅっと俺の手を握った。
「そうでしょ?」
「あ、ああ」
ドキっとした。顔も、近い。
「私は……」
何か言いたいけど言えない、そんな顔だった。
そして、決心したように顔を上げ、
「ねえ、牧本君? 私はあなたにどうして学校に来るの?って質問をしたでしょう?」
「ああ」
意味は分からないがな。
その質問の答えも、俺は持たない。
「私は、そういうこと。不思議でしょうがないの。あなたたちがどうして、毎日学校に来るのか」
「どうしてって、決められているからだ」
「でも、あなたたちは自由じゃない。だから、羨ましくて……妬ましかったの」
「お前は……」
「どうにもならない現実が私の目の前にはあって、悲しむしかなかったわ。でも、チャンスが来たの」
ぎゅぅ、俺の手を握り締めるみゆ。
温かい、そして柔らかかった。この感触が幽霊なわけがない。
「牧本君なら分かってくれると思ったのだけれど……あなたは分かってくれなかった。そもそも分かってくれる人なんて、最初から誰もいないことに私は気付いた
私と違って、ここにいる人たちはもう、私の望みを叶えてくれるみたいだから……。しょうがない話よ、私は理解されない。チャンスが来ても結局は大きな壁があった」
握っている手が震えている。
みゆは今にも泣きそうだった。
どうして。
どうしてそんなにも悲痛そうに。
「最後に牧本君にお願いがあるの」
その潤んだ瞳に逆らうことができる男はこの世に存在することができるのか。
いや、できない。
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