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お店の入り口のドアが開き、鈴の音がチリンチリンと鳴りました。
「すみません白石さん、待たせちゃいましたね。」
そう言いながら寄ってきたのは芳野出版の今村君でした。
歳は確か24だったかな?
いつも通りの黒縁メガネに、灰色のスーツ。
急いで来たのか髪には寝癖があります。
「そんな事ありませんよ~。」
私は返事を返しながらテーブルを軽く片付けました。
今村君の注文を済ませ、話は本題に入ります。
「さっそくなんですが白石さん、今回の話は上巻とだいぶ内容が変わってるんですよ。」
「んっ…と言うと?」
「それがですね、青山さんの小説って王道だったり変則だったりはしますけど、普通の恋愛小説だったじゃないですか。
それが今回の『愛する君へ』の下巻はちょっと違うんですよね…」
私はふむふむとうなずきながら話を聞いていましたが、この時はまだ深く疑問には思いませんでした。
「違うって…どう違うの?
まさか人が死んだりの暗いストーリーじゃないよね?」
冗談混じりに言ったつもりでしたが、今村君の表情は変わりませんでした。
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