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俺の持っていたケータイ電話が、刀へと変わった。
混乱しているヒマなんてないのは分かってる。
ただ俺は、
この後どうすればいい?
この刃物で目の前のオッサンを刺せっていうのか?
「アイカ…逃げようよ…っ!」
「ちょっと、なに言ってるの?
はやく斬るのよ!リツ君!」
「ふざけんな、できねぇよ!」
「戦えもしない臆病もんが武器なんか出しやがって!」
再度、男が刀を構える。
俺はそのスキを突いてベランダから自分の部屋へと転がるように飛び込んだ。
「リ、リツ君…ッ!?」
部屋からも飛び出して、
玄関を抜けて…。
使えもしない刀を握り締めたまま外に逃げていた。
アイカの声が、
背を向けた家のベランダから耳へと届く。
「リツ君!?リツ君…ッ!」
俺は歯を食い縛ったまま、
後ろを振り向けずに立ち尽くす始末。
「…殺す気なんだ、
しょうがねぇだろ逃げたって!」
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