‐はじまり‐

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俺の2メートル先で、 “THE GAMEの販売はここまで!” と、殴り書きされた看板を無理矢理手渡される少年が見えた。 「では、こちらの方で区切らせて頂きます! えー、THE GAMEの次回入荷日は未定となっております! ご了承願いまぁーすっ!」 そうメガホンで伝えると、 店員の男は逃げるように店内の奥へと去って行く。 大勢のブーイングが飛び交い、 抗議する大人や八つ当たりする奴らでパニックになり始めている。 俺もその仲間になろうかとも考えたが、 暴動を背にその足は帰宅する道を辿っていた。 「まぁ、やり始めるやつがいるんだ。 それからどんなゲームなのか知ればいいし。」 自分で自分を慰める。 いや、待て俺! ユウマは早く並んでいたんだ! きっと買えたに違いない!! そう思い、俺はケータイでユウマに電話を掛けた。 「…おかけになった電話は、 電波の届かない所にあるか電源が入って――」 「こんな時に限って…。」 ケータイをしまい、また進みだす。 結局買えなかったあのゲーム。 買った奴らは中身をその場では見ずに早々と帰ってった。 一体どんな内容なんだろう。 気になるけど、 少し怖いかもな。 ゲームは誰もが楽しめる娯楽。 それをこんなにも注目させておいて、詳細はぜんぶ隠す。 もしもこれが駄作だったら? …何万人がこのクソゲーの巻き添えになるのだろうか。 アッハッハッハ! そう考えれば、 俺はラッキーな方だと思えなくもないな。 …はぁー。 「なぁそこの君、 ちょっといいかい?」 突然俺を、 後ろから誰かが呼び止めた。  
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