成長

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車海老…時価。 値段はわからないが… 私は兼ねてから念願だった車海老の踊り食いを恐る恐る頼んだ。 「わぁ…きた」 私は活きのいい車海老二匹がのった皿に目がいく。 まさか… でもその時もう一人目を光らせていた人物のことに気がつかなかった。 「殻を剥きますね」 店員が私の目の前で殻を剥いてくれる。 「美味しそう」 私は楽しみに見ていた。 「はい。どうぞ」 一匹めを剥き終わり食べようと箸を持った瞬間横から延びた手に持っていかれた。 「あっ!!!!!」 素早い。 手の方向を見ると娘が口の中に入れた。 私は止まった。 店員の二つめを剥く手も止まっていた。 そして二匹めを向き終わった。 「今度こそ」 箸をもって身構えていた私だがまたしても娘の手の方が早かった。 パクッ!ゴクン。 二三回噛んだと思ったら いとも簡単に飲み込んだ。 私は思わず力が抜け箸を落としてしまった。 「お下げしますね」 店員も気の毒にと言わんばかりの顔をして低い声で言いながら皿を下げた。 娘だけは何事もなかった表情をしていた。 「せっかくの車海老だったのに…」 私は泣くにも泣けない気分になった。 そして初めて我が子が憎いと思った瞬間だった。 レジでの支払いの時車海老の値段を見て驚いた。 「車海老1250円…」 それは落ち込んだ私に追い撃ちをかけることとなった。
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