312人が本棚に入れています
本棚に追加
成長
肉づきが良くなった娘の一ヶ月検診の日。
私は娘を連れ病院へ行った。
「あら…○○さん。赤ちゃん一段と大きくなってぇ」
世話になった看護婦が声をかけてきた。
「一段と…有難うございます」
一緒の時期に生まれた赤ちゃんに混じり一際大きくなった娘はやはり目立つ。
「二ヶ月検診ですか?」
「いや。一ヶ月です」
私に聞いた主婦は悪そうな顔した。
いよいよ体重測定。
娘を体重計にゆっくり寝かす。
体重計の針は見る見る下がっていった。
「えっ?あ…6013です」
看護婦が読み上げた。
信じられない顔をした医師が針を見直した。
「6013…」
そして母子手帳に記入した。
この一ヶ月で2㌔弱の成長に誰もが驚いた。
そして三ヶ月検診。
保健所から通知の葉書が届いた。
私は市バスに乗り出掛けた。
保健所の中に入ると大勢の赤ちゃんがいた。
「この多さなら娘もあまり目立たないだろう」
私は変な安心感に浸っていた。
オムツ一枚にさせて体重測定の順番を待った。
私の前は外人さんだ。
「やっぱ外人さんの子は大きいなぁ」
抱かれている男の子を見て内心思った。
そしていくらわが娘が大きいとはいえさすがに外人さんの子供には負けると安心していた。
そして外人さんの番。
「98××です」
保険婦が読み上げた。
「ほぉ…」
やはり大きい。
回りからどよめきの声があがる。
次は我が娘の番だ。
ゆっくり体重計にのせる。
「ねぇ…10㌔超えたよ」
保険婦が何故か興奮気味で言った。
「え…?」
近くにいた4人の保険婦が集まってきた。
「わぁ…本当だぁ。10㌔超えてる」
一瞬にして注目の的となった私と娘。
私は苦笑いをしながらその場を凌いだ。
「10.1ですね」
保険婦が母子手帳に記入した。
「三ヶ月検診で10㌔超えたのはこの保健所始まって以来なんですよ」
そう言うと笑いながら記入していた。
私は褒められているのか笑われているのか複雑な気持ちだった。
最初のコメントを投稿しよう!