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娘は離乳食は好まなかった。
旦那が帰って来るとすぐ隣に座り込みつまみを気にする。
旦那の好物の明太子。
「まだ食べれないから駄目だよ」
だが旦那が美味しそうに食べるつまみから目を離そうとはしない。
そして旦那の箸の行く先をしっかり目で追っている。
隙あれば手をだしそうだ。
そんな時明太子に五本の指を突っ込み契った。
「あっ!!!」
私は掴んでいる娘から明太子を取ろうとした。
だがその瞬間娘はとっさに全部口に入れた。
「早っ!」
「ひぃ…」
娘は思ってもみない辛さから見る見るうちに涙目になり汗をかきだした。
「まずいでしょ」
「まじゅくない!」
普通はこれで懲りるとこだが娘は懲りなかった。
「めんちゃいこちょうだい」
この歳で明太子の味を知った娘はそれからも欲しがるようになった。
それ以来旦那は隠して食べるようになった。
一歳半頃海へ遊びに行った際安くて美味しい海鮮の店で昼食を取ることにした。
店に入ると落ち着きのない娘は店内を動き回る。
座らせても座らせても座らない娘に旦那が怒った。
「こら!いい加減にしろ」
尻を叩いた。
すると娘は逆切れした。
テ-ブルに並べてある箸や爪楊枝などをひっくり返す。
もう手がつけられない。
この切れ方は旦那にそっくりだ。
そんな時注文した品が並んだ。
すると食欲旺盛な娘はさっきまでの落ち着きなさが嘘のように座りだした。
そしてテ-ブルの上の品を吟味しだす。
「あんたはこっち!」
子供用にと頼んだ品を目の前に差し出した。
娘は一瞬中身を見た。
「嫌!こっち」
旦那の頼んだ皿を指差した。
「これお父さんの」
「嫌!○○の」
あくまで自分のと言い張る。
「違う。こっち」
旦那と私はせっかく並んだ料理を目の前にして娘を説得することと娘の手を阻止することで必死だった。
「もう一口だけだぞ」
根負けした旦那が娘の口に運んだ。
だが一口で終わらない。
「まだ…まだ…」
結局全部食べられ旦那は酒を飲みながら子供用にと頼んだ熊さんの絵がついた皿の料理を食べていた。
娘だけが満足そうだった。
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