学校

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 疑問は空を彷徨ったままだったが、いつもと変わらず今日も学校にいた。今日の朝、久々の感覚が左腕を襲った。治りかけていた不可解な縦四本の切り傷が、人為的にすべて開かれている。激痛の最中、再び包帯の中に小さな紙を見つけた。それにはこう書いてあった。 『疑惑は本物だ。それこそ真実。今日昼食時に3F資料室で待つ』 と書かれていた。遂にこの悪質な悪戯の張本人と見られる人物が接触を要求してきた。人の体に平気で何回も傷をつけた挙げ句、なおりかかっている傷をもう一度開くといったサディズムの固まりともいえる奴だ。危険に違いない。しかしこのまま放っておいたらまた何をされるかわからない。一連の奇妙な出来事から、自分に何かが起こるのかもしれない。何かつかめれば解決につながるかもしれない。それなら事の張本人に会えるというのはもってこいの条件だ。  いろいろなことに対して疑うようになってしまっていたため、これは罠かもしれないとも思ったが、意を決して昼、資料室に行ってみることにした。しかし3Fに資料室などなかちはずだが…  3Fに行き、資料室を探した。廊下を端から歩くと、廊下の奥まったところに音楽室があるのだが、その手前に約束の資料室があった。来てみてもここに資料室があったという記憶はなかった。  資料室のドアを開けるとすぐに声がした。男のしっかりとした低い声がした。 「よく来てくれた。さあ中に入りドアの鍵を閉めてくれ。」 頭だけではなく、体の生理機能までもが、この危険を感じていた。 「早くしてくれ。このことが他に知られては困る」  危険を覚悟で中に入り、ドアの鍵を閉めた。すると本棚の影から声の主がでてきた。 「まじめにも指示に従ってくれたようだね。まぁそれは君の未知への恐怖をこちらが利用したこともあるが。」 どうやらこの不可解な出来事を知っている口調だったので、おそらく事の張本人であろう。 「短刀直入にいいます。何故こんなことをするんです。ここを出たらすべてを警察などそれなりのところに証します」 「まず一つだけ話を聞いてもらおう。今から話すことを聞いた後もそのように思うなら好きにしてくれ。」 「何故あなたの話を俺がきかなければならないのです。」 「君も気付いただろう。クラスの人数の増加で。君は記憶の中に少なからず疑問を持ったようだったよ。知りたくないのかい?その答えを」
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