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「あ、ほら…雲が届く位置まで…」
お姉さんが天に手をかざす。注がれた視線の先には綿菓子のような白い雲があった
だけど途端に頭に空に居ることがよぎって恐怖に見回れた
震えがお姉さんにまで伝わる
「…寒いのかな…?」
ちょっとお姉さんが困惑したように、震える僕に問い掛ける。僕は必死に頷いた。何度も、何度も
「……そう。じゃあもっと低いところを飛ぶわね…」
そういってお姉さんが高度を下げる
がくっと下がるその感覚に雌竜のように小さく悲鳴を上げながら僕はお姉さんにしがみついた。
ただずっと不自然にならないように心がけて、悟られぬようにじっと空の旅が終わるのを待つ
そんな怯える僕を焦らすかのようにお姉さんは無言になって空を飛び続ける
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