飛べないドラゴン

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そのちょっと後だった。僕とお姉さんは無事に崖に着いた 「よいしょ…」 お姉さんの背中から降りて地面を踏みしめる。そしてこんなにも地上が安心できる場所だったと初めて僕は気付いたのだ 踏みしめ、土が固まり、足裏にくっつくあの鬱陶しい感覚も、何もかもがとても愛しく感じられた 自然と笑みが零れそうになる 「嬉しそうね」 お姉さんが微笑みながら尋ねてきて僕はやっとそれに応えることが出来た 「もう、皆居なくなっちゃってる…」 降り立ったそこは僕が落ちた場所だった。だけど人…竜の気配を感じない。みんな帰ったようだ ある意味好都合だった。後はさっさと巣に急げば皆に見られるよりは笑い者にされなくて済む。そう思い、お姉さんに適当にお礼をいって引き上げようとしたその時だった 「母~さ~ん」 遠くからこだました声が僕の希望を完全に打ち砕いた
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