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「この声は…」
嫌な予感がする。暑さで蒸れていた毛皮が急に冷やされていくように感じ、身震いをした
だが無情にも時は止まる事無く進み、バサッバサッという空を切るような音が僕の毛皮と心を揺らす
「ふぁ、ファティルサ…?」
手で塞いでも眩しく光る太陽を疎ましく思いながら僕はダメ元で喋りかけた
願わくばこの声が彼女でありませんように…
「…テティシア?」
僕の願いは物の数秒で見事に玉砕された。僕達幼竜の中でも飛んで悪戯好きなファティルサ。一番の特技が告げ口と言う今状況に最悪な要素が現れてしまったのだ
「…た…ただ…い…ま…」
言葉では平静を装おうとするが、明らかに動揺で滑らかに喋れて居なかった
口の端がヒクヒクとあがり顔が引きつる
「どうしてここに居るの?」
もっとも恐れていた質問が飛び出す。僕はもうパニックだった
「あ、ちょ、こそ、あっ」
お手本にも成れそうなくらいのあたふた振りを自分でも驚くくらいにしてしまっていた。意志とは関係なく両手がわしゃわしゃと動く
「ファティルサちゃん?」
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