~プロローグ~ 人探し

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彼女はミール・サドー、48歳、ごく普通の主婦である。 「実は依頼というのは、人探しなのです。」 「人探しですか?」 「はい。」 そして、彼女は一枚の写真を取り出した。 写真には若い女性が写っていた。 「私の娘なのです。」 名前はサリー・サドー、19歳、実家の和洋服店の店員である。容貌も十分で、知性もかねているというのが、彼女らしい。 「今からちょうど一週間前、友達と旅行に行くと言って、家を出かけたんです。棚卸しもするので、いいかなと送ったんです。でも、後で友達の方に伺ったら、そんな計画はしていないと言ったんです。それから二、三日待ったんですけど、何の返事もなかったんです。誘拐じゃないかと思って、警察に捜索願を出したんですけど、今になっても何の成果も出ていないんです。さすがに警察だけではあてにできなくなったんです。そこで、先生のところへ伺ったということなのです。」 話を聞いていると、典型的な消失例だった。こういう場合、いたって心配する程のことでもない。とにかく、二、三質問をしてみた。 「荷物は大きかったですか?」 「荷物ですか?荷物は旅行でつかっていたバックでした。かなり入ると思いましたけど。」
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