第一章

11/13
前へ
/33ページ
次へ
辺りはすっかり暗くなっていた。 「お待たせ。そろそろ行こうか。」 彼は体を起こすと、懐中電灯を付けた。 「はっはい。」 私はとても不安だった。こんな暗い中で山の中を歩くなんて。ただ不思議と行きたくないとは思わなかった。 「じゃあ僕の服を掴んでてね。離しちゃ駄目だよ。」 そう言うとゆっくり歩を進めた。私は彼の背中の服をしっかりと掴んだ。 周りは全く見えなかった。目をつぶっても変わらない暗さ。 足元は砂利道だが歩きにくくはなかった。 「ほら着いたよ。早いでしょ。」 「えっ。」 そこは何のへんてつもないただの広い空間。どういう訳かその空間には木が生えていなかった。 「見ててね。」 そう彼が言うと懐中電灯の明かりを切った。 最初は何が何だか分からなかったが、目が暗闇に慣れていくとその美しさに私は言葉を失った。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加