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「ここは湖なんだ。」
夜空の星屑が小さな湖の水面にうつしだされていた。そして風が吹く度に水面に浮かぶ星達はゆらゆらと揺れ始め、私たちの心を誘った。
「綺麗だろ。ここは僕のお気に入りの場合なんだ。きっと僕しか知らない場合さ。小さい頃から何かあるとここに来てた。ここにくると心がリセットされるんだ。どんな嫌なことも忘れられる。」
彼は嬉しそうに話した。
そして彼は靴と靴下を脱ぎズボンを捲りあげると、湖の中へ入っていった。
両手を広げ、天に向かって大きく仰いだ。
「ここ宇宙みたいだろ。心が宇宙のように広くなるんだ。」
その光景はまるで限りなく広い宇宙に点在する星達のようだった。
「結ちゃんも来なよ。」
彼が大きく手を降った。
私も靴を脱ぎスカートを両手で持ち上げると湖の中へゆっくりとはいっていく。
ひんやり冷たい水は心地よさを感じさせた。
ゆっくり彼のもとへ向かった。
「すごい。」
まさしくそこは宇宙だった。私は無意識に両手を上げて深呼吸をした。
「気持ちいい。」
「良かった。気に入ってもらえて。」
彼は私の方をみて微笑んだ。
「でもどうして私にここを?」
私はふと気になった質問をした。その時は何も考えずに聞いてしまったが、言ったあとに私は気が付いた。気が付いたというより『まさか』というような期待の気持ちがあった。
「君が好きだから。」
彼は何も恥じることなく私の目を真っ直ぐにみつめ答えた。
その瞬間私の目からは涙が溢れた。その涙は水面にポツリと落ち、円形の波状が私たちを包んだ。
「私も好きです。」
私は彼の大きな体に包まれた。月明かりに照らされながら、無数の星達に祝福されながら。
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