第一章

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「ありがとうございました。」 あれから私は彼に車でおくってもらった。 「あっ、また敬語つかって。」 「あっ、ごめんね。」 私たちは付き合う事になった。恋をするまでにそう時間はかからなかった。それはお互いに同じ気持ちだったらしい。 「じゃあ、また連絡してね。遅くなってごめんね。遅いというかもう朝だけど。」 「大丈夫だよ。気を付けてね。ありがとう。」 私は車を降りると、彼の車が見えなくなるまで手を降り続けた。 そして彼は曲り角を曲がる瞬間クラクションを一回ならした。 「ありがとう、好樹。」 家の前の桜の木にはもう桜の花びらはついておらず、地面にも落ちてはいなかった。 「もう散っちゃったのか。寂しいな。」 でも、私の心は満ちていた。 彼と出会う事が出来たから。
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