第二章

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病院へ着くなり好樹はタンカーで緊急治療室へ運ばれた。 その間私は何も考える事ができなかった。俄かに信じることができず、頭の中が真っ白な白紙になっている。 「あの時私が我が侭なんて言わなければ好樹は……。」 再び涙が込みあげてくる。 目に焼き付いたあの光景は一生忘れることは出来ないだろう。 何時間経っただろか。日付が代わり時間は一時を過ぎていた。 ふと病室に目をやると、丁度ドアが開き中から医者であろう人物が現れた。 「あのっ、好樹は。」私は医者であろうその人物に聞いた。 「貴方、ご関係は?」 「えっ。知り合いです。」 「ご家族の方とは連絡はとれますか?」 冷静に話す医者に私は恐怖を感じた。 「もしかして、好樹は……好樹は。」 「一応一命はとりとめましたが、意識が回復するかは今後の経過しだいです。ご家族の方に連絡を。」 「……はい。」 私はその場に座りこんだ。携帯を取り出す手が震えている。 電話帳を開き好樹の実家に電話をかける。 夜中なのでなかなか出なかった。 十コールくらい鳴らした後に受話器をとる音が聞こえた。 「はい。」 いかにも眠そうな声で出たのは好樹の母親だった。 「あの、こんな時間にすみません。結です。」 「あら、結ちゃん。こんな時間にどうしたの?」 ただ事ではないと悟ったのか母親の声色が変わる。 「えっ、好樹が。」 後ろでバタバタと何かをしている。父親を起こしているのか、誰かと会話をしていた。 「じゃあ、今から向かうから。結ちゃんはそこにいて好樹についていてあげて。」 そういうと好樹の母親は電話をきった。 時間は二時を過ぎている。 外は未だに雨が降り頻っていた。
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